コラム2019.03.31
インバウンド消費の伸びしろは「ナイトタイムエコノミー」にあり!
「ナイトタイムエコノミー」という言葉をご存じでしょうか?これからのインバウンド消費を伸ばすためキーワードとして、最近注目されている言葉です。今回は日本の夜の観光と、その課題についてお話しさせていただきます!
ナイトタイムエコノミーとは?
ナイトタイムエコノミー、直訳すると「夜間経済」です。文字通り、夜の市場を活性化させて新たな需要をほりおこし、経済を盛り上げていこうという取り組みです。
夜間というのは、主に午後8時から午前2~3時をさします。この時間帯に楽しめるものを思い浮かべてみると、クラブやライブ、ダンスイベント、深夜営業の飲食店などが考えられますよね。
しかし、イメージにとらわれず、観光、観劇、ショッピング、スポーツなど日中に活動していること全てがナイトライフを楽しむコンテンツになるとしたら。ナイトタイムエコノミーが、大きな可能性を秘めていることがお分かり頂けるかと思います。
なぜナイトタイムエコノミーが必要なのか
ナイトタイムエコノミーが注目される最も大きな理由は、インバウンド消費にあります。
欧米では、深夜まで健全に楽しめるイベントやお店が当たり前にあります。そんなインバウンド客からすれば、日本の夜は物足りないのです。昼間だけでなく夜の日本も楽しみたいと思っているのに、お店は閉店してしまい、日付が変わる頃には終電も終わっています。
せっかく外国人観光客が張り切って夜の街に出かけても、行くところがないのです。これは大きな機会損失です。そこで、ナイトタイムエコノミーを充実させ、インバウンドの夜の消費喚起をすることで娯楽費の増加につなげていこうというわけです。
ナイトライフエコノミーはイギリスから学べ
夜間市場に早くから取り組み、成功しているのがイギリスのロンドンです。
ロンドンの夜間市場は、263億ポンド(約3.8兆円)の経済効果があると言われています。さらに、2029年には283億ポンド(約4.1兆円)に達すると言われているのです。
日本でも議論は始まっています。2017年4月には「時間市場創出推進(ナイトタイムエコノミー)議連」が発足しました。同じく2017年10月には、観光庁が「「楽しい国 日本」実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議」の資料の中でナイトタイムエコノミーについて触れています。
また、東京都渋谷区も、ナイトタイムエコノミーに注目。2016年には渋谷区観光大使ナイトアンバサダーが誕生しました。 著名人が名を連ね、渋谷の夜の魅力を発信しています。
ナイトタイムエコノミーを盛り上げるための課題
行政もナイトタイムエコノミーに前のめりですが、インバウンド消費につなげるためには、まだまだ課題が山積みです。
■施設の不足
深夜でも開いているお店というと、バーや居酒屋、カラオケなどが思い浮かびますよね。しかし、昼間と同じような活動ができる夜遊びの場というと、なかなか無いのが現状です。
また、既存の施設を有効活用して夜に稼働させることが出来るかも、考えなければいけません。
■交通
ナイトタイムエコノミーの成功に欠かせないのが交通の問題です。移動手段がないことには、ナイトライフは盛り上がりません。
ロンドンの地下鉄は24時間営業です。同じように日本も24時間走らせるのか、路線を限定するのかなど、検討しなくてはいけません。
■住民の理解
インバウンド客が集まる観光地であっても、夜の時間帯に外国人が集まるとなると、反対する人が出てくるのは容易に想像できます。夜間に健全に楽しめること、安全・安心が確保されていることなど、住民の理解を得ることは不可欠です。
■従業員の確保
ナイトタイムエコノミーが進めば、そこに従事する人も集めなければいけません。インバウンド客の対応ができる従業員を夜間に確保するとなると、一筋縄ではいかないでしょう。
まとめ
さまざまな課題はありますが、日本のナイトタイムエコノミーに関する議論はまだ始まったばかりです。今後、日本でしかできないナイトタイムエコノミーが確立し、インバウンド需要の大きな受け皿になることを期待したいと思います。