コラム2019.05.31
中国がシェアリングエコノミー大国になった背景に「WeChat」の存在
中国では「シェアリングエコノミー」の市場が爆発的に拡大しています。その成長の背景にはスマホアプリ「WeChat」が大きく影響しているといいます。シェアリングエコノミー事情と、これらのサービスが中国で浸透した背景を見ていきましょう。
シェアリングエコノミーとは?
「シェアリングエコノミー」とは、使われていない個人資産を
不特定多数の人にインターネットを介して共有する仕組みのこと。
サービス内容別に種類分けをすると、主に5つの種類に分かれます。
1.モノのシェア…不要なものや使っていないものをシェア
(レンタル・フリマ等)
2.空間のシェア…空き家・駐車場・会議室などの空間をシェア
3.移動のシェア…自動車・自転車のシェア、相乗りシェア
4.スキルのシェア…空いている時間やタスクをシェア
(家事・介護・育児の代行・クラウドソーシング等)
5.お金のシェア…クラウドファウンディング等
中国は、世界屈指のシェアリングエコノミー大国
シェアリングエコノミーでは、インターネットを活用することで
需要と供給のすみやかなマッチングを実現します。
中国国内では、近年、急速にインターネットやスマホの普及が進みました。
それに伴い中国のシェアリングエコノミー市場も急成長しています。
中国のシェアリングエコノミーに関する統計では、以下の数値が報告されています。
■取引規模(2018年):2兆9420億元(約46兆8000億円)※前年比41.6%増
■利用ユーザー(2018年):7億6000万人
(※国家情報センターによる統計)
ちなみに、2018年度の日本のシェアリングエコノミー市場の取引規模は1兆8874億円。
(※一般社団法人シェアリングエコノミー協会による統計)
日本の取引規模と比較してもお分かりだと思いますが、
中国のシェアリングエコノミー市場は桁外れの大きさ。
目覚ましい成長ぶりで、世界に存在感を示しています。
中国のシェアリングエコノミー拡大にはWeChatが関係?
前章でも触れましたが、
シェアリングエコノミーが中国で急成長した背景の一つには、
インターネットやスマホの普及があります。
その中でも特に、大きく影響を与えているのが、
中国のIT企業「テンセント」が提供するコミュニケーションアプリ「WeChat」です。
月間で10億人以上が利用するSNSサービスであり、
多くの中国人の生活に密接しているサービスといえます。
WeChatは、チャット機能だけでなく、
モバイル決済、ユーザー間のお金のやりとり、チケット予約、配車サービス、
デリバリーサービスなど、多くのサービスと連携しています。
そうした仕組みから、WeChatにはすでに、決済機能、個人認証機能、
個人データの管理・利用が行える環境が整っていました。
WeChatによって整っていた環境に、シェアリングエコノミーの仕組みが重なったことで
中国では爆発的に浸透したといわれています。
日本政府も意欲的に推進するシェアリングエコノミー
中国と比べると、まだまだ小規模である日本のシェアリングエコノミー市場。
しかし、シェアリングエコノミーの事業は、訪日外国人の需要の取り込みや、
少子高齢化などの社会問題を解決する糸口になるとして、日本でも注目されています。
ただ、新しいサービスであるシェアリングエコノミー事業は、
想定外のトラブルや課題が生じることが懸念されます。
日本の法律や規制は、そのシェアリングサービスに追いついていない状況です。
2018年には住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されるなど、
日本政府も市場拡大の推進に意欲的であるのは事実ですが、
今後、さらなる法整備を行う必要が課題としてあります。
まとめ
中国のシェアリングエコノミーのお話を中心にご紹介しました。
多くの中国人は、他人が提供する製品・サービスを利用することに抵抗がなく
シェアリングエコノミーの利用はごく一般的です。
旅行先の日本においても、その需要は例外ではなく、
民泊サービスや相乗りサービスなどを積極的に利用したいと思う訪日中国人は多いようです。
訪日外国人観光客が増加の一途をたどる日本で、
シェアリングエコノミーの普及に期待が集まります。