コラム2019.03.04
「爆買い」が失速?中国人観光客による化粧品購入に異変
かつて、中国人観光客の代名詞とも呼ばれた「爆買い」。インバウンド業界のみならず、日本の景気全体を支えるほど、そのインパクトは絶大なものでした。
その中でも家電と並び主要な商品となってきたのが「化粧品」です。しかし今、異変が起きています。
「爆買い」を支えた化粧品
まず、なぜ化粧品が爆買いされてきたのでしょうか?
第一に、化粧品は世界的に見ても「お土産」の定番と言えるからです。
世界の空港の免税店を見ると、お酒、タバコ、チョコレートと並んで化粧品が大きなスペースを取っているのがよく分かるかと思います。
機内に持ち込んでもかさばらず、重さもあまり無いが高級品で、女性に喜ばれるお土産として化粧品は世界的に支持されています。
もちろん日本の空港でも化粧品はよく買われていますが、日本において化粧品の爆買いの場所となってきたのは百貨店一階の化粧品フロアとドラッグストアです。
ドラッグストアはこれを目当てとした大量の旅行客が押し寄せて、ドラッグストア側も中国語ができるスタッフを配置したりとインバウンドの主役とさえ言われました。
百貨店も、従来一階という一番目立つスペースに化粧品売り場を配置してきたとおり、化粧品は主力商品です。
また、お土産用だけでなく、自分用に購入する女性も多くいます。
こうした女性客は一人っ子政策の結果生まれた時間とお金が自由に使える世代に多く、化粧品を「一式」揃えて帰国する、という人も多いです。
第二に、日本には世界を代表する化粧品メーカーが多く存在します。
エリクシールやクレ・ド・ポー ボーテなどのブランドを有する資生堂を筆頭として、セグレタなどの花王、エスプリーク・雪肌精などのKOSEと、有力なブランドを持つ企業が複数存在しています。
日本の化粧品の競争力の高さも、爆買いで化粧品が選ばれる背景となっているでしょう。
爆買いに大打撃を与えた「EC法」
ではなぜ、そうした化粧品の爆買いが今失速しているのでしょうか。
キーワードは中国で2018年夏に成立した「EC法」です。
今まで中国ではネットショップが乱立していましたが、この法律によって納税や登録が義務化されました。
これによって、日本で化粧品を買い現地で売るいわゆる「転売業者」が大きく数を減らしたのです。
爆買いは中国の富豪がやってきて一気に大量の買い物をするというイメージが未だに強いですが、旅行客の裾野が広がった今、そうしたとてつもなく資金力のある旅行客は一部分に限られています。
そうした中、爆買いを支えていたのがこうした業者です。仕入れ目的で来日するので、同一品目を多量に購入します。
化粧品も主要な品目としてよく買われていました。これがここ数年の「爆買い」の中身と言えるでしょう。
実はメーカーはEC法を歓迎?
一方で、化粧品メーカーはEC法を歓迎している、という見方もあります。
転売業者は個人で営業するショップで、怪しいものも数多くあります。
梱包などが雑に行われる場合も多く、商品の管理も適切とは言えません。
こうした転売業者が多く日本の化粧品を扱うことによって、ブランドイメージが低下する問題があったのです。
なのでブランドイメージを守りつつ、正規の販路を伸ばしたい化粧品メーカーからすれば、こうした転売業者が減ることは歓迎するべきものと見られているのです。
さいごに
インバウンド業界で神話のようにも扱われてきた「爆買い」。
しかし近年、その構造は変化しつつあります。
大量に日本の製品を買ってもらえることは経済にも大変いい影響を与えますが、それ以上に旅行客の満足度を高めることが、爆買いの次のステップとして必要なのかもしれませんね。