コラム2018.12.29
インバウンド客を取り込もう!観光庁も後押しする泊食分離とは?
2018年も順調に訪日外国人観光客数が増加し、いよいよ2020年の4000万人が射程圏内に入ってきました。増え続けるインバウンド客を受け入れるためのカギは、旅館の泊食分離です。観光庁が押しすすめるイバウンド対策のひとつ、「泊食分離」についてみていきましょう。
観光庁の戦略、泊食分離とは
泊食分離(はくしょくぶんり)とは、素泊まりだけを提供する宿泊形態を言います。これまで旅館のスタンダードだった1泊2食付きではなく、いわゆるビジネスホテルなどでよくある、宿泊だけのプランをさします。
この泊食分離、インバウンドの取り込みに有効だということで、2017年から観光庁も推進しています。では、なぜインバウンド対策として泊食分離が注目されているのでしょうか?
インバウンド客のニーズと旅館のプランはミスマッチ
泊食分離が注目される訳は、インバウンド客のニーズにあります。それを知る手がかりとして、観光庁のデータ(訪日外国人消費動向調査 2018年1月~3月期、4月~6月期 報告書)をみてみましょう。
インバウンド客に「訪日前に期待していたことは?(複数回答可)」と尋ねると「日本食を食べること」と回答した人が最も多く、全体の7割近くにのぼりました。彼らの、「食事」に対する期待値の高さが分かります。
加えて、「最も満足した料理は?」という問いに対しては、1位が肉料理、2位がラーメン、3位は寿司と続きました。これは2017年の年間報告書でも全く同じ順位です。
また、訪日外国人の平均滞在日数は約6日間です。欧米諸国になると、さらに長くなります。宿泊が長くなればなるほど、いろいろな日本食を楽しみたいと思うのが自然ではないでしょうか。
インバウンド客のニーズと比べると、宿泊と食事がセットになっている旅館は魅力的にうつりにくいのです。旅館の食事がいくら美味しくても、同じようなメニューが続くと飽きてしまいます。つまり、1泊2食付のプランはインバウンド客のニーズとミスマッチであると言えます。
さらに、インバウンド客の約8割は宿泊先にホテルを選択します。様々な要因がありますが、旅館よりもホテルの方が彼らにとって都合がいいのです。それでも、最大の顧客である中国人観光客は旅館に宿泊する率が他の国に比べて高いと言われてきました。
しかし、中国人観光客の旅行スタイルは徐々に個人旅行に移行しています。個人旅行が増え、旅の自由度が高くなればなるほど、気軽に泊まれるホテルを選ぶことになるはずです。そうすれば、旅館離れがますます加速する恐れがあります。
泊食分離がインバウンド客の満足度を上げる
そこで、泊食分離です。旅館のプランが彼らのニーズに合っていないのであれば、単純に宿泊と食事を切り離し、インバウンド客には宿泊だけをしてもらえばいいというのです。食事は好きにとってもらった方が、旅館を選ぶインバウンド客が増えるのではないかというわけです。
もともと旅館には、インバウンド客を魅了するさまざまなコンテンツがあります。畳の和室、浴衣、温泉、布団などは訪日外国人観光客の心をくすぐるものです。旅館で日本らしい宿泊体験をしたいという外国人は多いのに、取り込めていないというのが現状なのです。
まとめ
インバウンド客の取り込みには、彼らのニーズを理解することが不可欠です。実際に、泊食分離で旅館の稼働率が大幅にあがった成功事例もあります。
ただ、泊食分離を成功させるためには、旅館の周辺環境が充実していることも欠かせません。宿は素敵でも、飲食店が充実していなければ意味がないのです。泊食分離がひとり歩きするのではなく、旅館を含む街全体でインバウンド対策を考えて頂ければと思います。