コラム2018.10.23
インバウンド顧客の取り込みに成功した農泊の事例2選
地方創生のカギをにぎるインバウンド顧客を取り込むため、「農泊」を積極的に活用しようとする自治体が増えています。今回は農泊の成功事例の中から、独自の取組みを行っている地域を2つご紹介します。ぜひ、地方のインバウンド対策の参考にしてください!
事例1 こだわりの民宿が訪日外国人観光客に人気、石川県鳳珠郡能登町
能登半島の北部に位置する鳳珠郡能登町は、人口わずか17,000人ほどの小さな町です(平成30年10月1日現在)。限界集落と言われた能登町ですが、今では外国人観光客もふくめた観光入込客数が1万人を越える観光地になっています。
もともとは少子高齢化の打開策として、グリーン・ツーリズムに特化した観光事業を始めたのがきっかけです。「春蘭(しゅんらん)の里」と名付けられた一帯に農家民宿を作り、地元の食材にこだわった料理、体験事業の実施などで観光客を呼び込むことにしたのです。
この地域のこだわりは、民宿のコンセプトを統一し体験メニューを充実させることでした。例えば、1日1客を囲炉裏のある宿に迎え、宿泊客とコミュニケーションを密にとれるようにしました。他に器には地元の輪島塗のものを使う、地元の食材にこだわり化学調味料を使わないで調理するといった具合です。
また、季節にあわせた体験メニューをそろえることにも力を入れています。能登半島の伝統文化である巨大奉灯の「キリコ」を担ぐプログラムなどはインバウンド顧客にも人気で、その他に体験できる内容は80を超えています。
地域の特性をいかした取り組みで国内外から観光客を受け入れ、平成26年には中国、韓国・台湾・タイ・イスラエルなどから約1,700人が訪れました。
開始当初の平成9年にはわずか1軒だった農泊施設も、平成21年に30軒、平成28年には49軒にまで増加。さらに平成18年には廃校を利用した交流宿泊施設「こぶし」をオープン、訪日外国人観光客も積極的に受け入れています。
事例2 農家の暮らしそのものを体験する教育旅行に特化した、滋賀県日野町
大阪からバスで約2時間、京都や名古屋からもバスで約1時間20分という立地にある滋賀県日野町は、人口約21,500人の自然にめぐまれた町です(平成30年10月1日現在)。
農村文化の衰退に危機感をいだき、平成20年に協議会を立ち上げ、農泊の取り組みを始めました。翌年から、農家の暮らしをそのまま活かした「体験型教育旅行」を開始。平成26年度までには、約13,700人が日野町に足を運んでいます。
また、平成22年にはインバウンド顧客も受け入れるようになりました。中国人観光客はもちろんアジア諸国などから、延べ約800人が農泊施設を利用しています。
日野町のインバウンド対策の特徴は、「教育」にあります。民宿として改めて施設を設けるのではなく、「受入家庭」と呼ばれる農家で日常の暮らしそのものを体験し、学ぶというものです。
滞在は長くても2泊3日まで。(一社)近江日野交流ネットワークのHPには「受入家庭は、日本語以外話すことは出来ません」という注意書きまであります。
受入家庭の宿泊には、必ず「家業おまかせプラン」をセットする必要があります。このプランは、農村の営みを一緒に体験するもので、田植えや稲刈り、畑の苗植えといった農業体験をはじめ、物づくりや生活文化体験などが用意されています。
関係先のHPは外国人の方でも見やすく、今後もインバウンド顧客は順調に増えると予想されます。
まとめ
2つの事例は、農林水産省HPにある「農泊の取組に関する優良事例」と「農泊プロセス事例集(2017)」を参考にピックアップしたものです。どちらも、日本人から見ればありふれた風景である自然や農業を、ユニークな発想でインバウンド対策に取りいれています。
ここにご紹介した内容がヒントとなり、インバウンドの誘客に繋がれば幸いです。